未邦訳反出生主義本探求其参 Thomas Ligotti “The Conspiracy Against The Human Race”
未邦訳反出生主義本探求其参 Thomas Ligotti “The Conspiracy Against The Human Race”
2010年にアメリカのホラー作家が上梓したノンフィクション作品。Better Never to Have Been同様、True Detectiveのシーズン1制作の参考になったことでも有名。一話でラストが自身の哲学を訥々と語るところにそれが顕著。
人が生きるということは、進化しすぎた“意識”を持っていることはホラーである・・・そんなメッセージが全編にわたって散りばめられた本書。” Cantankerous” や“Exegesis”など耳なじみのないBig Words、そして複雑で長めの文が散りばめられ、読み始めはとっつきにくい印象でした。内容もZapffeの哲学理論などやや抽象的で中々釈然としてこないのもその要因であったと思います。前回紹介した"History of Antinatalism"同様,一介の凡骨もといぽんこつの私では理解が及ばない箇所が数え切れませんでした。反面、後半に行くにつれ著者の文章にも少しずつ慣れていくと、著者以外のホラー作品の引用も混ざりだし、内容が個別具体的になるので純粋に著者の博覧強記さ、筆致に引き込まれていきます。
著者が序文で軽く触れたように”Being alive is all right”といった戯けた常識が壊されていくことにじわじわ怯懦しつつもそこにカタルシスを感じられる快作。即物的な快楽や現実逃避に少し疲れて来た方が少しずつ読み進めるのにうってつけであります。