ぽんこつ地獄変

ジュマンジやグリードアイランドを超えるクソゲーとの闘争

雑記 セラフィックブルーに登場する「毒親」たち

*話の流れ上どうしてもセラフィックブルーの内容について多少ネタバレしてしまっているので一応ご注意を


Youtubeに何本か動画を上げてみて今のところ一番再生回数が伸びたのはRPGセラフィックブルーからレオナの演説を抜粋したものでした。今見ても彼女が今わの際に残したそれは反出生主義者・生に疑問を持つ方に訴えかけるもので、作者の「天ぷら」氏も特に力を入れられて作られたフッテージであったことでしょう。かつてご自身のブログで「世間の作品は世の中の明るいところを強調しがちであるが、自分の作品ではこの世の醜いところを炙り出していきたい」というようなことを語っておられましたから、レオナの演説・引いては作品全体に反出生主義のエッセンスを強烈に盛り込まれたのでしょう。ただ、公平性を期すためか、作中には反出生主義とは逆の思想を語るキャラクター(主人公たちの内数名)や出生を善し悪しで論ずるべきではないという中立的な価値観をもったキャラクター(ハウゼン)も登場しています。そもそもセラフィックブルー自体実際に遊んでみればわかりますが、鬱展開や奇特な価値観を持った人物だけで構成されている作品ではないです。

 

このゲームだけの専売特許ではないことは確かですが、セラフィックブルー毒親生命倫理についても優れた語り部でした。シナリオにすんなりクローンや遺伝子組み換えが組み込まれていた覚えがあり、それらがファンタジー特有のやや超越的な要素(輪廻転生など)といい感じに共鳴していました。生命倫理に関しては、私的には『メタルギアライジング』の無線通信や某番組のプレゼンに推されて思わず買ってしまった『Ever17』などにもよく盛り込まれていたと記憶しています。ただし、『Ever17』の方にはちょっと問題があって、とある場面でクローンの是非について語っているのですが、わりとあっさりクローン肯定気味な見解を垂れ流していてウっとなった覚えがあります。。

 

 

セラフィックブルー三大毒親

閑話休題。実際に3名ほど強烈な毒親が登場しているので彼らについて簡単にまとめていきます。うろ覚えの部分もあるので間違いがあったらすいません。私のチャンネルのものではなく他所様の実況動画になるのですが、関連動画も貼っておきます。

 

ジークベルト・アンスバッハ

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最初に紹介するのはヒロインである『ヴェーネ』の義理の父にあたる人物です。こいつの何が最悪かというと、方々で「臨場感を凌駕してリアルに於いて反映実現される、有質量の全ての結果」なる迷言と共に語られてきた子育てをゲームとしかみなさず、自分が楽しいなら、目的を果たせるなら相手がどれだけ苦しもうが無問題という価値観です。VRで勝手にやっとけって話ですが。。。

ヴェーネ自体簡単に言うと世界を覆う脅威を解決するために造られた存在なのである種の「最適解」を無慈悲に叩き出してしまうこいつが教育係に当てがわれたのかもしれませんが、紆余曲折あったとはいえヴェーネに猫を殺めることを毎年強制するなどあり得ない悪行を繰り返しています。ヴェーネが自傷しようが感情を失おうがお構いなしで、発言も自分の行いが如何に素晴らしいか、正しいかを強調するものばかり。こいつ自体割と悲惨にあっさりくたばったのと、息子のフリッツがこのゲーム屈指の善人なのが救いではあります。

 

ゲオルク・ローズバーグ

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主人公の一人『レイク』の祖父にあたる人物。ジークベルトの陰に隠れがちですがこっちも相当なイカレポンチです。主人公の母であるシリアと二人きりで暮らしていた期間が長かったためか、彼女に異常なまでに執着しており、彼女がレイクを身籠ったと知るや激怒。彼女と親子の縁を切ってしまいます。彼女がレイクを出産した際に亡くなってもその執着心は途切れるどころか増していき、挙句彼女のクローン人間を作成するプロジェクトを開始してしまいます。しかも理想の個体が出来るまでに造られた試作品は廃棄or追放。たちが悪いことに権力と財力が抜きんでているので自分の目的を達成するためなら住人の犠牲も厭わず街一つ破壊する位のことも平気でやってのけてしまいます。

一旦是非は措くとして、日常的な反出生主義ないし反出生賛美の文脈ではよく「親は子供が経験するであろう苦痛を考えずこの世に生み出す許されないほど身勝手な存在だ」と言われます。この価値観を持つ方からすると、ゲオルクは子供を作っておきながらその子供が死してなおその生命を自分のおもちゃとして愚弄し続け、事実身勝手さ故に上記のジークベルト同様他者をも好き勝手に犠牲にしているが故『最悪』という概念の権化と言えるでしょう。

 

ドリスの母親

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上の二人と比べると規模は小さいものの、却って一番実際にいそうな毒親が彼女です。『ドリス』は主人公の一人で、この世界特有の病『ディスピス』由来の軽度の知的障碍、そして天才的な魔法の才能を有しています。ドリスの母親は自分の人生の足かせとなるドリスを切り捨て、莫大な金を受け取る代わりにドリスを魔法アカデミーに預けて親としての義務を放棄してしまいます。天才であり教師陣と昵懇であったこと、知的障碍ゆえ言語面が少したどたどしかったこと故にドリスは理不尽にもクラスメイトから凄絶ないじめを受けてしまいます。

物語終盤でこの母親とドリスが再会する場面があるのですが、主にドリスの母親と言葉を交わし、彼女が自身の子供を捨てるという愚挙に至った原因を問い質すのはドリスと最も仲が良い主人公の一人、『ヤンシー』です。

胸糞が悪くなるようなシーンの多いゲームですが、ここで聞かされる彼女の言い訳の数々が最低過ぎて気分が落ち込む度は屈指だと思います。自身の子供が障碍を背負ったのは難しいポイントではあるとはいえ、俗世間の価値観に染まり切って浅薄な表面上の幸せばかり追いかけ、挙句子供なんて自分にどれだけ見返りをくれるかどうかのギャンブルに過ぎないとうそぶき、自分が最低だろうが知ったことではないと開き直るのですからどうしようもない。ドリス自身はいじめから解放され、まっとうな価値観を持った仲間たちと共に過ごせているものの、この母親に大きな罰が下されないまま(なんとなく将来破滅に至ることは暗示されていますが)物語が終わってしまうのもなんともやるせないです。

 

まとめ

私自身毒親サバイバーではないものの、なんども子供を理不尽にしかりつけ、暴行する人の形をしたばけものを目撃しています。特に数年前に見かけたそれはあまりに醜く、子供に「孕んだから産んでやっただけ」「生きてるだけで迷惑だから死ね」などと聞き捨てならない暴言を何度も子供にぶつけていました。少年は唇をかんで俯き、じっと耐えるだけでした。偽善になってしまいますが、今でも割って入って助けてあげられなかったのが苦しいところです...


フィクション、そして現実で親になる資格がなかった人間を目撃すると何故子供を持つことに免許は要らないんだろう?とMistro氏の様に疑問を疑問を抱きます。国家は立場上そういった制度を設けることは未来永劫ないだろうし、反出生主義の議論でも、実際にそういった制度を設けても一人っ子政策チャウシェスクの時と同じくストリートチルドレン無戸籍児の増加といった悲劇を生むだけだという結論が提示されているので別の倫理的問題から逃げるのは難しそうです。それでもやはり反出生主義者としては、こういった問題を根治しうるミームを少しでも拡散できれば、と考えます。

 

製作者様web

https://web.archive.org/web/20100227111507/http://www2.odn.ne.jp/~caq12510/

製作者様ブログ http://xxxtempuraxxx.blog65.fc2.com

 

 

反出生主義をテーマにした楽曲を発表しているミュージシャン5選

 redditなどのソースから反出生主義的な要素を含んだ楽曲を発表しているミュージシャンを数組簡単に紹介します。楽曲に取り込むにしてもややマニアックなテーマということもあり、各人の反出生主義へ至る道もバラバラで、途轍もなく重い経歴を辿ってきた方から普通に生活を送る中で生じた疑念を手繰り寄せた方まで色々。

 

 

Zola Jesus  



 恐らく今回紹介する中では最も高い知名度を誇るロシア系アメリカ人の彼女。Peter Wessel Zapffeに影響されており、彼の「人間(の意識)は進化しすぎたがゆえにただ生きるだけでも過剰に考え事をしがちであり、それにより経験する苦しみも過剰になりがちである」という考えに共鳴しているようです。” Dangerous Day” や” Soak” といった楽曲でそれが静かに、しかし同時に闊達に表現されています。因みにアルバムタイトルの"Okovi"とはスラブ語で「束縛」の意だそうです。「人間は肉体という牢獄から死ぬまで逃れられない」という彼女の哲学がここに反映されています。

 

Pitchforkなどから高評価されているためスノッブ感の強い楽曲ばかりかと思いきや、楽曲の下地がポップでかつミニマリストという自身のバックグラウンドもあってか歌詞もあまり余計なことを語らずシンプルな傾向が強いものが多いのでさほど身構えずゆるりと楽しむこともできるのが良いです。

 

Born into debt, a line of no request

Pay what I can but the rest, I have no chance

So, I pay nothing instead

I pay nothing instead
”Soak”より

 

Mistro/Disobey 93

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  デンマークヴィーガンのラッパーで、出演したポッドキャストでは特に誰かに教えられるわけでもなく、悲惨な世界の現状に目を向けていたら幼い頃から既に反出生主義者だったと述懐していました(なんで車の運転には免許が要るのに子供を持つのには要らないのだろう等の疑問も)。反出生主義界隈では一番有名なミュージシャンと思われるだけあり、ここで改めて紹介することも余りありません。代表曲”Every Cradle”“Your Lullaby”の歌詞はここで紹介する中でも最も反出生主義に忠実。残念ながら2018年に活動休止。


 There's no better way to love our children, protect them

Than by not creating them, you respect them

There's no better way to embrace the human race

Than by not procreating in the first place

“Your Lullaby”より

 

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 Mistro氏がかつて"Storken Kommer"MVにて着用していたTシャツとほぼ同型のもの。Spreadshirtにて販売されていましたが残念ながら販売中止。。。

 

Greydon Square

孤児院で育ち、後に米軍に入隊、イラク戦争で同僚たちの死を目の当たりにし、PTSDに苛まれるなど過酷な生涯を送ってきたアメリカ人ラッパー。上記の経験がきっかけで彼の歌詞の中核を担うテーマの一つである無神論に目覚め、さらに物理学や政治などのシリアス・難解な要素も曲に盛り込むことで、合理的かつ科学的に物事を考えるように人々を啓発するという目標を達成しようとしています。

恐らくこの徹底的に合理的に考えるというアプローチのためか、7作目となるアルバム”Compton Scattering”の”If I Had a Choice””Gone Boy”の二曲で「そもそもこの世は子供を生きさせるに値しない」といった彼の考えが語られるに至っています。宗教の非合理性やそれに伴う弊害を非難、乗り越えようとするというアティチュードは音楽性こそ全然違うものの次に紹介する”Deathspell Omega”と奇しくも似通っている感あり。

Be life going its own way
Never creating it to suffer, knowing it goes away
This world ain’t worthy of my kids
If not of usage if I can prevent their birth then imma do it

"If I Had A Chioce"より


Deathspell Omega

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トラウマになりそうな凶悪なアートワーク。フリゲのセラフィックブルーに出てくるモンスターにも似ており赤ちゃん=天使説へのカウンターか。

 

フランスの謎多きブラックメタルバンド。密教的・哲学的な風采に仕上がった難解で荘厳な歌詞や曲構成にダイハードなファンたちから多くの賛美が寄せられています。彼らの最高傑作の一つと目される3rdアルバム”Si Monumentum Requires, Circumspice”ではキリスト教に基づいた出生主義・出生賛美故に人間が盲目的に産み落とされ続け、生き地獄で苦しみ続けることを主に”Sola Fide II” “Malign Paradigm”といった楽曲でこれでもかと皮肉っています。

下記に引用した歌詞の"Let the children come to me"の部分は特に邪悪に、力を込めて歌いあげられており、ブラックメタル的には虚妄の塊である神の子と聖書を汚すことに誠意が尽くされているさまが垣間見えます。

 Jesus spoke words of wisdom: "Let the children come to me"

What's more enthralling indeed than ruining through them the genesis of life itself?
Sola Fide II”より

 

Def Con Dos

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 スペインのヒップホップ/ラップロックバンド。30年近いキャリアを誇る大ベテラン。アクション映画から司法まで硬軟問わず幅広いテーマを扱い、時に物議を醸すような曲を多く作り、ボーカルに至っては比較的最近twitterでテロを称揚した被疑で1年の実刑判決をくらうなど話題に事欠かない。

1996年発表の6thアルバムUltramemia収録の” Basta de Nacimientos”においても遺憾なくその暴れん坊将軍っぷりは発揮されていて、「ちょっとの快楽と引き換えに人類無責任に増やしちゃってどーすんの?なんで先祖とやらは俺たち生みやがったの?(大意)」と世間に思いっきし喧嘩を売っています。

Mientras agonicen niños en el mundo

debería ser delito parir uno tuyo.

Adopción militante.
” Basta de Nacimientos”より

 

今回紹介した楽曲のプレイリスト

www.youtube.com

参考

https://www.reddit.com/r/antinatalism/comments/bhl5h1/list_of_antinatalist_music/

http://hostess.co.jp/news/2017/06/014372.html

https://www.villagevoice.com/2014/10/17/zola-jesuss-taiga-antinatalism-in-the-style-of-2000s-era-j-lo/
http://veganoutreachuk.blogspot.com/2015/10/the-species-barrier-35-podcast-show.html

https://www.reddit.com/r/DeathspellOmega/wiki/albums/smrc

https://elpoderdelimaginario.blogspot.com/2011/05/

https://es.wikipedia.org/wiki/Antinatalismo