ぽんこつ地獄変

ジュマンジやグリードアイランドを超えるクソゲーとの闘争

反出生主義をテーマにした楽曲を発表しているミュージシャン5選

 redditなどのソースから反出生主義的な要素を含んだ楽曲を発表しているミュージシャンを数組簡単に紹介します。楽曲に取り込むにしてもややマニアックなテーマということもあり、各人の反出生主義へ至る道もバラバラで、途轍もなく重い経歴を辿ってきた方から普通に生活を送る中で生じた疑念を手繰り寄せた方まで色々。

 

 

Zola Jesus  



 恐らく今回紹介する中では最も高い知名度を誇るロシア系アメリカ人の彼女。Peter Wessel Zapffeに影響されており、彼の「人間(の意識)は進化しすぎたがゆえにただ生きるだけでも過剰に考え事をしがちであり、それにより経験する苦しみも過剰になりがちである」という考えに共鳴しているようです。” Dangerous Day” や” Soak” といった楽曲でそれが静かに、しかし同時に闊達に表現されています。因みにアルバムタイトルの"Okovi"とはスラブ語で「束縛」の意だそうです。「人間は肉体という牢獄から死ぬまで逃れられない」という彼女の哲学がここに反映されています。

 

Pitchforkなどから高評価されているためスノッブ感の強い楽曲ばかりかと思いきや、楽曲の下地がポップでかつミニマリストという自身のバックグラウンドもあってか歌詞もあまり余計なことを語らずシンプルな傾向が強いものが多いのでさほど身構えずゆるりと楽しむこともできるのが良いです。

 

Born into debt, a line of no request

Pay what I can but the rest, I have no chance

So, I pay nothing instead

I pay nothing instead
”Soak”より

 

Mistro/Disobey 93

youtu.be

  デンマークヴィーガンのラッパーで、出演したポッドキャストでは特に誰かに教えられるわけでもなく、悲惨な世界の現状に目を向けていたら幼い頃から既に反出生主義者だったと述懐していました(なんで車の運転には免許が要るのに子供を持つのには要らないのだろう等の疑問も)。反出生主義界隈では一番有名なミュージシャンと思われるだけあり、ここで改めて紹介することも余りありません。代表曲”Every Cradle”“Your Lullaby”の歌詞はここで紹介する中でも最も反出生主義に忠実。残念ながら2018年に活動休止。


 There's no better way to love our children, protect them

Than by not creating them, you respect them

There's no better way to embrace the human race

Than by not procreating in the first place

“Your Lullaby”より

 

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 Mistro氏がかつて"Storken Kommer"MVにて着用していたTシャツとほぼ同型のもの。Spreadshirtにて販売されていましたが残念ながら販売中止。。。

 

Greydon Square

孤児院で育ち、後に米軍に入隊、イラク戦争で同僚たちの死を目の当たりにし、PTSDに苛まれるなど過酷な生涯を送ってきたアメリカ人ラッパー。上記の経験がきっかけで彼の歌詞の中核を担うテーマの一つである無神論に目覚め、さらに物理学や政治などのシリアス・難解な要素も曲に盛り込むことで、合理的かつ科学的に物事を考えるように人々を啓発するという目標を達成しようとしています。

恐らくこの徹底的に合理的に考えるというアプローチのためか、7作目となるアルバム”Compton Scattering”の”If I Had a Choice””Gone Boy”の二曲で「そもそもこの世は子供を生きさせるに値しない」といった彼の考えが語られるに至っています。宗教の非合理性やそれに伴う弊害を非難、乗り越えようとするというアティチュードは音楽性こそ全然違うものの次に紹介する”Deathspell Omega”と奇しくも似通っている感あり。

Be life going its own way
Never creating it to suffer, knowing it goes away
This world ain’t worthy of my kids
If not of usage if I can prevent their birth then imma do it

"If I Had A Chioce"より


Deathspell Omega

youtu.be

トラウマになりそうな凶悪なアートワーク。フリゲのセラフィックブルーに出てくるモンスターにも似ており赤ちゃん=天使説へのカウンターか。

 

フランスの謎多きブラックメタルバンド。密教的・哲学的な風采に仕上がった難解で荘厳な歌詞や曲構成にダイハードなファンたちから多くの賛美が寄せられています。彼らの最高傑作の一つと目される3rdアルバム”Si Monumentum Requires, Circumspice”ではキリスト教に基づいた出生主義・出生賛美故に人間が盲目的に産み落とされ続け、生き地獄で苦しみ続けることを主に”Sola Fide II” “Malign Paradigm”といった楽曲でこれでもかと皮肉っています。

下記に引用した歌詞の"Let the children come to me"の部分は特に邪悪に、力を込めて歌いあげられており、ブラックメタル的には虚妄の塊である神の子と聖書を汚すことに誠意が尽くされているさまが垣間見えます。

 Jesus spoke words of wisdom: "Let the children come to me"

What's more enthralling indeed than ruining through them the genesis of life itself?
Sola Fide II”より

 

Def Con Dos

youtu.be

 スペインのヒップホップ/ラップロックバンド。30年近いキャリアを誇る大ベテラン。アクション映画から司法まで硬軟問わず幅広いテーマを扱い、時に物議を醸すような曲を多く作り、ボーカルに至っては比較的最近twitterでテロを称揚した被疑で1年の実刑判決をくらうなど話題に事欠かない。

1996年発表の6thアルバムUltramemia収録の” Basta de Nacimientos”においても遺憾なくその暴れん坊将軍っぷりは発揮されていて、「ちょっとの快楽と引き換えに人類無責任に増やしちゃってどーすんの?なんで先祖とやらは俺たち生みやがったの?(大意)」と世間に思いっきし喧嘩を売っています。

Mientras agonicen niños en el mundo

debería ser delito parir uno tuyo.

Adopción militante.
” Basta de Nacimientos”より

 

今回紹介した楽曲のプレイリスト

www.youtube.com

参考

https://www.reddit.com/r/antinatalism/comments/bhl5h1/list_of_antinatalist_music/

http://hostess.co.jp/news/2017/06/014372.html

https://www.villagevoice.com/2014/10/17/zola-jesuss-taiga-antinatalism-in-the-style-of-2000s-era-j-lo/
http://veganoutreachuk.blogspot.com/2015/10/the-species-barrier-35-podcast-show.html

https://www.reddit.com/r/DeathspellOmega/wiki/albums/smrc

https://elpoderdelimaginario.blogspot.com/2011/05/

https://es.wikipedia.org/wiki/Antinatalismo