ぽんこつ地獄変

ジュマンジやグリードアイランドを超えるクソゲーとの闘争

未邦訳反出生主義本探求其弐 History of Antinatalism: How Philosophy Has Challenged the Question of Procreation

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Amazon | History of Antinatalism: How Philosophy Has Challenged the Question of Procreation | Lochmanová, Kateřina, Kutáš, Michal, Svoboda, Filip, De Giraud, Théophile, Poledníková, Markéta, Akerma, Karim, Koumar, Jan, Cabrera, Julio, Vohánka, Vlastimil | Social History

 

 これまたKindle Unllimitedで追加料金なしで読める本であり、いくつかの反出生主義関連のメディアで紹介されていたので軽い気持ちで手を出してみましたが、パンピーには読むだけで中々骨の折れる錯雑な要素が盛りだくさんな内容であり、ベネターによるいわゆる非対称性理論を記号論理学や分析学で解体したMichal Kutáš氏による寄稿などはその辺の素養がさっぱりない人間からしたら特に手に負えなさ過ぎて序盤からノックアウトされてしまいました。どうやら2018年頃に反出生主義についてまとめる為のカンファレンスが開催されていたらしく、その成果などがこの本に詰め込まれている様です。しかしながら、ソロヴィヨフによる生殖否定への筋道の立て方や新約聖書に見られる生殖批判の解説などは、反出生主義と一見相性がよろしくない観点からでも(広義の)反出生主義を拾い上げられるという解釈を提供してくれているという点で私的には斬新でありました。さらに、余談ですが、時に『潔癖』とディスられてしまう現代反出生主義の理論付けと至善を追い求めようとする・していた過去の人類の精神の揺れ動きにいみじくも共通項が見いだせるのではとも感じた次第です(無論それ自体が良いかどうかは脇に置くとして)。ギリシャ哲学において本当に反出生主義的な思想の先鞭がつけられていたかどうかの検証なども苦しいながらも少しだけ楽しめました。私は本書のエッセンスの100分の1も吸収できませんでしたが反出生主義を本格的に研究して卒論などを書くような方には持ってこいではないでしょうか。著者達が認めるように現代ないしごく最近のムーブメント、そして東洋の反出生主義に関しては手薄な感もありますが内容自体にはガチ勢でもまず納得するでしょう。いつも以上に乱文になってしまいましたがひとまずこんな感じで。

 

参考

youtu.be

本書執筆陣の一人であるKateřina Lochmanová氏が先述のカンファレンス開催に伴った苦労、ソロヴィヨフの哲学、反出生主義に対する自身の姿勢などについて語っています。